2021年07月01日

会館だより「かけはし」

夏目漱石と正岡子規と寺田寅彦〜先生と教え子〜

 東京都庁が有楽町から現在の新宿に移転したのは、平成3年3月のことです。当時第二庁舎の29階に勤務していました。ある時、仲間たちと正岡子規のことを話していたら、当時の読書家の部長から正岡子規のことを話題にするなら「これを読め」とばかりに「病床六尺(岩波文庫)」を渡され、読みました。

 それから8年後の平成10年4月に、JR鶯谷駅の近くに勤務することになりました。近くに、「病床六尺」の舞台となった「子規庵」がありました。この本の内容が、妙にはっきり想い出され、何回も訪れたものです。

 ところで、最近、寺田寅彦著「漱石先生(中公文庫)」を読む機会がありました。教師をしていたので、書名の「教師」と「漱石」になんとなく惹かれて手に取ったのです。著者の寺田寅彦(1878〜1935年)は、物理学者・随筆家として知られている人です。

 読み進めると、寺田寅彦は、当時熊本県の旧制第五高等学校の頃、夏目漱石(当時、夏目金之助)先生から英語を習ったことが分かりました。つまり、漱石と寅彦は先生と生徒の関係でした。本書は、尊敬の念を抱きつつ、私の先生はあの著名な夏目漱石だと誇らしげに師弟関係を綴ったものなのです。私たち教師は、夏目漱石のような著名人ではないが、多くの教え子から頼りにされ、慕われていることは、素晴らしいことであることを自認してよいと思います。

その頃、漱石は俳句を詠んでいて、寅彦も一緒に勉強していたということです。そして、驚くことに、漱石は正岡子規を俳句の師と仰ぎ、鶯谷の子規庵に手紙を出し、俳句の指導を受けていたということです。つまり、子規は漱石の俳句の先生で、寅彦は漱石の教え子であるとともに子規の孫弟子と言うことになります。

本書を読んでいると、夏目漱石、正岡子規、芥川龍之介、津田清楓(画家)、高濱虚子、中谷宇吉郎、そして寺田寅彦の人間としての交わりが伝わってきて、はるか昔の温もりを感じました。思い出に、長々とお付き合いいただきありがとうございました。(H.K)

<備考> [成美教育文化会館]で検索すると、「かけはし」「メッセージ」「Q&A」「ほん本ブック」をはじめ「一宇荘」「至楽荘」「成美教育文化会館の会場貸出」など様々な情報が閲覧できます。一度、覗いてみてください。
posted by 豊島修練会 at 13:09| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする