カルガモのあしは冷たい水の中でも平気
〜水鳥のあしの仕組みとロスナイ換気の仕組みの共通項〜
今年は寒い日が続きます。早朝、健康のためにと近くの公園に散歩に行くと、凍るような池の水に、カルガモがのんびりと浮いているのを見つけました。
鳥の羽が野外の寒さからその身を守ることは、私たちが羽毛布団にくるまってみればよくわかります。しかし、あしの先には羽毛がありません。もしも人間が冬の冷たい池の中に手や足を入れていたら、たちまちしもやけになってしまうし、ひどいときには凍傷になって、その部分の組織が死んでしまいます。しかし水鳥のあしが、しもやけになったり凍傷になったりしたという話は、聞いたことがありません。なぜ水鳥は、冷たい水の中にあしを入れていても、平気でいられるのでしょう。
鳥の体のいろいろな部分で、体温がどう違うか調べてみると、胸のあたりは40℃前後あるのに対し、あしの先は5℃〜7℃くらいしかないことがわかります。常にあしが水に浸かっている水鳥の場合には、0℃近くまで下がっていることもあります。人間の足の組織は、このような低温には耐えられませんが、鳥のあしの組織は、低温でも平気なようにできているのです。また、鳥では、あしの動脈と静脈が接近していて、ここで動脈の血が静脈に冷やされ、静脈の血が動脈に温められるので、体全体が冷えてしまうということがありません。このような体の仕組みのおかげで、カルガモは平気で池に浮いていられるのです。
さて、これと似ているのが、「ロスナイ換気」と呼ばれる建物の仕組みです。冬は、換気のために空気を外に出すときに、室内で温められた空気で外から取り込む空気を温め、夏は反対に、室内で冷やされた空気で外から取り込む空気を冷やす(熱交換)、という装置です。
成美教育文化会館のホールとギャラリーは、空調を作動させると、換気口に吸われた館内の空気の半分は外に出し、外から取り込む空気の半分は、ロスナイ換気によって温度を変えられた新鮮な空気になります。この仕組みによって、ドアを閉めきっていても、十分に換気が行われているのです。
その他の部屋については、一本一本の蛍光管の裏に換気口(会議室や和室などは別な場所)が開けられていて、室内の照明をつけると、天井裏のファンが作動してロスナイ換気が行われる仕組みになっています。元々は、閉め切っていても室内の空気が汚れないようにという目的でつけられた装置ですが、コロナ禍で換気が必要とされるなかでは、安心して利用できる施設になっていると思います。 (T.Y.)