「白く見えるのは水蒸気です」か?
1年の中で最も気温が低くなる日があるのは、1月の終わりから2月中旬にかけてです。北海道では氷点下40℃以下になることがありますし、沖縄でも、10℃以下に下がることがあります。今年は都心でも、1月の終わりに氷点下4℃まで気温が下がりました。東京都心の観測史上最も気温が低かったのは、1876年(明治9年)1月13日で、氷点下9.2℃です。
人間が定住する場所で最も寒い場所とされているのは、ロシア東シベリア・サハ共和国のオイミャコンで、1933年に氷点下67.7℃を記録しました。しかし、夏には30℃を越えることもあり、寒暖差の激しい土地としても知られています。釣った魚はすぐに凍りつくので冷凍庫の必要はなく、細菌やウイルスの感染症にもほとんどかかることはありませんが、新型コロナウイルスは気温の高低に関係なく活発に活動するらしく、多数の感染者を出しているそうです。
ところで、寒い日に外に出ると吐く息が白く見えますが、そんな日には、吐く息だけではなく、ほかにもいろいろなところから白いものが見えるようになります。
以前、「ごみ焼却施設の煙突から、たくさんの煙が出ている」という苦情を受けた自治体の担当者が、「煙突から出ているのは、煙ではなく水蒸気です」と答えたら、納得してもらえたという話を聞いたことがあります。果たして、この答えは正しいでしょうか。
日本の小学校では、「水蒸気」は水が気体になったのもので、目に見えないものだということを学習します。目に見えるのは、水蒸気が冷やされ小さな水の粒になったもので、それを「湯気」と呼ぶということも学習します。そうすると、煙突から出ていた白いものは、水蒸気ではなく、湯気だったということになります。でも、「水蒸気という言葉を聞いてどのように感じるか」というアンケートを採ってみると、多くの人が、水蒸気は、白い色をしていると答えるそうです。また、湯気という言葉については、やかんなどの先から勢いよく噴きだす、白いふわふわしたものと感じているそうです。
沸騰しているやかんの口の先をよく見ると、口の近くでは何も見えず、口から少し離れたところから白く見えだすことがわかります。つまり何も見えない部分が水蒸気で、白く見えるところが湯気なのです。白く見えていた湯気が、再び見えなくなってしまうのは、小さな水の粒が空気中に広がって水蒸気にかわり、空気の一部になるからです。洗濯物が乾くのも、花瓶の水が減っていくのも、すべて水が水蒸気に変わったからです。 (T.Y.)