2023年05月18日

会館だより「かけはし」


「青」と「緑」 〜「あお」といっても「あお」にあらず?〜


 「目に青葉 山ホトトギス 初鰹 (めにあおば やまほととぎす はつがつお)」の季節となりました。一年の中で、木々の新緑が美しい季節になりました。

 放浪の俳人種田山頭火の俳句にも「分け入っても 分け入っても 青い山」という有名な句があります。

 「青葉」とか「青い山」と聞いても、海の青い色を思い浮かべる人は誰もいないでしょう。「青」という言葉は、「青りんご」、「青果店(せいかてん)」、「青物(あおもの)」、「青菜(あおな)」、「青汁(あおじる)」、「青虫(あおむし)」など、「緑色」の物を指す場合にも使われます。

 信号機の色も、実際の色とは違う表現が使われています。日本に交通信号が登場したのは、今から100年近く前ですが、はじめのうち青信号は、法律でも「緑色信号」となっいました。しかし、緑色の信号のことを「青信号」と呼ぶ人があまりにも多かったので、法律でも「青信号」に変わったそうです。

青い山脈.jpg 「青」には、「若々しい」という意味があります。「青年」、「青春」、映画「青い山脈」などはその例です。また「熟していない」とか、「未熟な」という意味もあります。「青いトマト」、「青い柿」というのは、緑色の食べられない実のことです。「青二才」というのは、経験の浅い年若い人を指します。

 もともと古代の日本には色を表す言葉が少なくて、1000年くらい前(平安時代)は、「赤」「白」「黒」「青」の4つしかありませんでした。その頃の日本人は、明るい色を「赤」、暗い色を「黒」、はっきりした色を「白」、そしてどれにもあてはまらない色を「青」と呼んでいたそうです。緑色のものを青色と表現するのは、その名残りと考えられています。

 一方、「緑色」ですが、「みどり」には、「みずみずしい」という意味があります。「みどりの黒髪」というのは、緑色に染めた髪ではなく、黒いつややかな髪のことです。また「嬰児(みどりご)」というのは、かわいい産まれたての赤ちゃんのことです。有名な詩の一節である「ああ ぎょくはい(玉杯)に 花受けて りょくしゅ(緑酒)に月の影やどし」の「緑酒」とは、澄んだ色のおいしい清酒のことを指します。

 このように青や緑だけでなく、源平合戦の源氏(白旗)や平家(紅旗)の戦いに由来する「紅白歌合戦」のように、それぞれの色にはいろいろな組み合わせや意味があります。言葉を辿ると身近な生活や過去の時代に触れることもできます。調べてみると面白いでしょう。(T.Y.)

posted by 豊島修練会 at 16:39| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする