アオマツムシが秋を告げる頃
まだまだ日中は暑い日もありますが、夜は、だんだんと涼しくなってきました。それとともに、野外では虫の声が目立つようになりました。
虫の声というと、足元の草むらから聞こえてくるように思いますが、最近都会では、木の上から雨が降ってくるように聞こえてきます。これは、鳴く虫が草むらから木の上に引っ越したわけではなく、アオマツムシという木の上に住む昆虫が増えてきたためです。
アオマツムシは、もともと日本にいた昆虫ではありません。100年くらい前の明治時代に、外国から入り込んできた昆虫です。初めて鳴き声が記録されたのは、東京の賑やかな場所として知られる赤坂です。この昆虫は木の枝に卵を産むので、輸入された苗木に卵が産み付けられていたのだろうと考えられています。幼虫も成虫も木の上に住むので、街路樹の多い都会は、彼らにとって住みやすい環境なのです。寒さには強くないので、北の地方にはいませんが、この昆虫が多くいる地方では、ほかの虫の声が聞こえないほど、うるさいくらい大きな声で鳴いています。
アオマツムシは、50年くらい前までは数も少なく、目立つ昆虫ではありませんでした。ところが、どうした訳か1970年代になってから突然数を増やしだし、最近都会では、秋の虫の声を代表する昆虫になってしまいました。
アオマツムシやスズムシ、マツムシは全部コオロギの仲間です。鳴くのはオスだけでメスは鳴きません。コオロギの仲間は、その鳴き声を前足にある耳で聞いています。
鳴くといっても、人間のように口から音を出すのではなく、2枚のはねをこすりあわせて音を出しています。ちょうど、バイオリンのようなものです。片方の羽を顕微鏡で見ると、小さなギザギザが沢山並んでいる様子を観察することができます。そのため、はじめは美しい声で鳴いていますが、秋の深まり共に、気温も低くなり、ギザギザも擦り減ってきて、声の美しさもだんだんと失われていきます。
今宵、屋外の虫の音に、秋の涼を求めましょう。 (T.Y.)