かけはし R0601月号@.pdfかけはし R0601月号A.pdf
冬の植物 〜四季をとおして、力強く、たくましく〜
1月に入ると、寒い日が続くようになります。落葉樹の葉もすっかり落ちて、空が明るく見えるようになりました。11月のかけはしでも冬芽のことについて少し触れましたが、サクラの枝の先を見ると、冬芽がたくさんついていることがわかります。丸みを帯びた方が花になる芽、少し細くてとがっている方が葉になる芽です。数で言うと、花芽のほうが圧倒的に多いので、簡単に区別することができます。葉と花が一緒に出るのがヤマザクラで、葉より花の方が先に出るのがソメイヨシノです。
ソメイヨシノは花もきれいで、すべての木が同じ親から接ぎ木で増やされたものなので、同じ地域の木は、ほぼ同時に花を咲かせます。唯一の欠点は、病害虫に弱く、寿命が60〜80年と短いことです。青森の弘前公園内には、例外的に、樹齢100年を超えるソメイヨシノが残っていますが、樹齢が1000年以上あると言われるシダレザクラに比べると、はるかに短命な木といえます。
目を下の方に向けてみると、冬の野原のナズナやタンポポの葉は、地面に貼りついて、バラの花びらのように放射状に広がっています。このような葉のかたちを「ロゼット」と呼びます。「ロゼット」には、「バラの花飾り」という意味があります。
この時期は、ほかの多くの植物が枯れて地上から消えているので、地面に広がった葉は、日光を十分に浴びることができます。そのため、冬の弱い日差しでも、しっかりと光合成を行うことができるのです。もちろん夏の方が、たくさん光合成を行うことができますが、夏のあいだは、植物が成長を続けているので、消費する養分も多く必要になります。それに対して、冬のあいだは、ほとんど成長しないので、消費する養分も少なくて済み、光合成で作った養分を、そのまま蓄えにまわすことができるのです。
また、お彼岸の頃に、美しい色や形の花を咲かせるヒガンバナは、秋に茎が伸びて花を咲かせ、花が終わると地面から葉が出てきて、冬のあいだその葉を茂らせて光合成を行い、春を過ぎる頃に枯れてしまいます。ほかの植物とは反対に、夏のあいだは地上から消えて地面の下で過ごし、秋になるとまた地上に現れるという、変わった性質をもっています。 (T.Y.)