かけはし R0602月号@.pdfかけはし R0602月号A.pdf
フユシャク 〜冬の雑木林で繰り広げられる営み〜
1月の「かけはし」で、ヒガンバナは夏のあいだ地上から消えることを紹介しましたが、昆虫のなかにも、夏のあいだ地上から消えて、冬になると現れるものがいます。その代表がフユシャクです。
フユシャクとは、冬に出現するシャクガ(尺蛾)の仲間のことです。東久留米あたりでも、雑木林で普通に見ることができるガですが、夜に飛び回る種類が多く、大きさも小さいので、あまり目につきません。一番いいのは、夜に懐中電灯をもって雑木林に行ってみることですが、昼間飛び回るものもいるので、注意して探せば、明るいうちでも見つけることができます。東久留米あたりの雑木林では、12月中旬から3月上旬まで見つけることができます。
フユシャクの成虫は口がないため、まったく食べ物をとりません。幼虫の頃に、からだのなかに蓄えた養分で、1ヶ月ほど生きることができるのです。
フユシャクのもうひとつの特徴は、日本に生息する35種類すべてで、メスのはねが退化して飛ぶことができないことです。メスは木の幹や、公園のフェンスなどにじっとしがみついていますが、はねがないかわりにあしが発達していて、思った以上に素早く歩き回ることができます。同じ場所でも、少し時間が経つと、さっきいたはずのメスが見つからなくなってしまうことがあるので注意して見てください。種類によっては、落ち葉の下に身を潜めてオスを待っているメスもいます。このような種類のオスは、メスの出すフェロモンをたよりに、メスをさがしだすと考えられています。
東久留米では、だいたい11月から3月までのあいだに活動し、産卵します。卵は春になると孵化して緑色のシャクトリムシになり、クヌギやコナラなどの葉を食べて成長し、2週間くらいで土中に潜りさなぎになります。そして成虫になる冬まで、そのまま休眠します。
フユシャクが、わざわざ寒い季節を選んで現れるのは、冬は他の昆虫やトカゲ、カエルなどの天敵が少ないからだと考えられています。また、メスのはねが退化した理由としては、天敵が少ないのでとぶ必要がなくなったというだけでなく、体温を奪う原因となるはねをなくして寒さに耐える力を強めたり、はねに使われなくなった栄養をからだに割り当て、よりたくさんの卵を産めるようにしたりするためだと考えられています。 (T.Y.)