2023年03月05日

会館だより「かけはし」


もう一度まわりを見つめてみましょう


 松尾芭蕉の句に「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」というのがあります。

 ナズナは、春の七草の一つになっているほど、親しまれている植物で、三角形の実の形が、三味線のバチに似ていることかナズナ.jpgら、ペンペングサとも呼ばれます。春になると白い花が咲きますが、一つ一つの花はとても小さくて、花が咲いているのかどうかわからないほどです。しかし、虫眼鏡で拡大して見ると、十字の白い美しい花だということがわかります。

 同じように春の野原を探すと、ハコベやホトケノザなど、美しい色や面白い形をしたものがたくさん見つかります。芭蕉のように、まわりをよく見つめてみると、思いがけない発見や驚きに、出会うことができるのではないでしょうか。

 ところで、電気コードの先についているプラグの先には、どれにも必ず丸い穴が開いています。この穴は一体なんのためにプラグ.jpg開いているのでしょう。使わないときに壁から出たくぎに、引っ掛けておくためのものでしょうか。実は、コンセントの中には丸い突起があり、これとプラグの穴が噛み合あうことで、プラグを抜けにくくしているのです。日本では経済産業省令という法律で、プラグは根元から11.3ミリの場所に直径3ミリの穴を開けることが義務化されています。もし穴の開いていないプラグのついた電気製品があったら、それは不良品です。

 またコンセントの方も、二つ並んだ穴は大きさが同じでなく、右の穴の方が少しだけ小さくなっています。壁に設置されたコンセント.jpgコンセントは、左の穴が9ミリ、右の穴が7ミリの長さになっています。コンセントの左側から供給された電気は、電気製品のなかで使われ、使われた電気は右側の穴に帰ります。この関係は、乾電池の+極(プラスきょく)と−極(マイナスきょく)によく似ています。

 ちなみに、「コンセント」という言葉は和製英語で、海外では通じません。英語では「アウトレット」とか「ソケット」という言葉を使います。「コンセント」には「同心円」という意味があります。明治時代に日本に伝わってきた電気器具には、丸い形のプラグやコンセントが使われていて「コンセントリックプラグ」と呼ばれていました。日本の「コンセント」という呼び方は、ここからきています。

 このように、普段何気なく使っている道具にも、改めて見つめてみると、思いがけない発見に、出会うことがあります。(T.Y.)

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2023年02月09日

会館だより「かけはし」


「白く見えるのは水蒸気です」か?

 1年の中で最も気温が低くなる日があるのは、1月の終わりから2月中旬にかけてです。北海道では氷点下40℃以下になることがありますし、沖縄でも、10℃以下に下がることがあります。今年は都心でも、1月の終わりに氷点下4℃まで気温が下がりました。東京都心の観測史上最も気温が低かったのは、1876年(明治9年)1月13日で、氷点下9.2℃です。

 人間が定住する場所で最も寒い場所とされているのは、ロシア東シベリア・サハ共和国のオイミャコンで、1933年に氷点下67.7℃を記録しました。しかし、夏には30℃を越えることもあり、寒暖差の激しい土地としても知られています。釣った魚はすぐに凍りつくので冷凍庫の必要はなく、細菌やウイルスの感染症にもほとんどかかることはありませんが、新型コロナウイルスは気温の高低に関係なく活発に活動するらしく、多数の感染者を出しているそうです。

 ところで、寒い日に外に出ると吐く息が白く見えますが、そんな日には、吐く息だけではなく、ほかにもいろいろなところから白いものが見えるようになります。

えんとつ.png 以前、「ごみ焼却施設の煙突から、たくさんの煙が出ている」という苦情を受けた自治体の担当者が、「煙突から出ているのは、煙ではなく水蒸気です」と答えたら、納得してもらえたという話を聞いたことがあります。果たして、この答えは正しいでしょうか。

 日本の小学校では、「水蒸気」は水が気体になったのもので、目に見えないものだということを学習します。目に見えるのは、水蒸気が冷やされ小さな水の粒になったもので、それを「湯気」と呼ぶということも学習します。そうすると、煙突から出ていた白いものは、水蒸気ではなく、湯気だったということになります。でも、「水蒸気という言葉を聞いてどのように感じるか」というアンケートを採ってみると、多くの人が、水蒸気は、白い色をしていると答えるそうです。また、湯気という言葉については、やかんなどの先から勢いよく噴きだす、白いふわふわしたものと感じているそうです。

やかん.png 沸騰しているやかんの口の先をよく見ると、口の近くでは何も見えず、口から少し離れたところから白く見えだすことがわかります。つまり何も見えない部分が水蒸気で、白く見えるところが湯気なのです。白く見えていた湯気が、再び見えなくなってしまうのは、小さな水の粒が空気中に広がって水蒸気にかわり、空気の一部になるからです。洗濯物が乾くのも、花瓶の水が減っていくのも、すべて水が水蒸気に変わったからです。  (T.Y.)
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2023年01月12日

会館だより「かけはし」


カルガモのあしは冷たい水の中でも平気

〜水鳥のあしの仕組みとロスナイ換気の仕組みの共通項〜


 今年は寒い日が続きます。早朝、健康のためにと近くの公園に散歩に行くと、凍るような池の水に、カルガモがのんびりと浮いているのを見つけました。カルガモ.jpg

 鳥の羽が野外の寒さからその身を守ることは、私たちが羽毛布団にくるまってみればよくわかります。しかし、あしの先には羽毛がありません。もしも人間が冬の冷たい池の中に手や足を入れていたら、たちまちしもやけになってしまうし、ひどいときには凍傷になって、その部分の組織が死んでしまいます。しかし水鳥のあしが、しもやけになったり凍傷になったりしたという話は、聞いたことがありません。なぜ水鳥は、冷たい水の中にあしを入れていても、平気でいられるのでしょう。

 鳥の体のいろいろな部分で、体温がどう違うか調べてみると、胸のあたりは40℃前後あるのに対し、あしの先は5℃〜7℃くらいしかないことがわかります。常にあしが水に浸かっている水鳥の場合には、0℃近くまで下がっていることもあります。人間の足の組織は、このような低温には耐えられませんが、鳥のあしの組織は、低温でも平気なようにできているのです。また、鳥では、あしの動脈と静脈が接近していて、ここで動脈の血が静脈に冷やされ、静脈の血が動脈に温められるので、体全体が冷えてしまうということがありません。このような体の仕組みのおかげで、カルガモは平気で池に浮いていられるのです。

 さて、これと似ているのが、「ロスナイ換気」と呼ばれる建物の仕組みです。冬は、換気のために空気を外に出すときに、室内で温められた空気で外から取り込む空気を温め、夏は反対に、室内で冷やされた空気で外から取り込む空気を冷やす(熱交換)、という装置です。

ロスナイ1.png 成美教育文化会館のホールとギャラリーは、空調を作動させると、換気口に吸われた館内の空気の半分は外に出し、外から取り込む空気の半分は、ロスナイ換気によって温度を変えられた新鮮な空気になります。この仕組みによって、ドアを閉めきっていても、十分に換気が行われているのです。

 その他の部屋については、一本一本の蛍光管の裏に換気口(会議室や和室などは別な場所)が開けられていロスナイ2.pngて、室内の照明をつけると、天井裏のファンが作動してロスナイ換気が行われる仕組みになっています。元々は、閉め切っていても室内の空気が汚れないようにという目的でつけられた装置ですが、コロナ禍で換気が必要とされるなかでは、安心して利用できる施設になっていると思います。            (T.Y.)

posted by 豊島修練会 at 15:57| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする