2023年08月31日

会館だより「かけはし」


アオマツムシが秋を告げる頃

 まだまだ日中は暑い日もありますが、夜は、だんだんと涼しくなってきました。それとともに、野外では虫の声が目立つようになりました。

 虫の声というと、足元の草むらから聞こえてくるように思いますが、最近都会では、木の上から雨が降ってくるように聞こえてきます。これは、鳴く虫が草むらから木の上に引っ越したわけではなく、アオマツムシという木の上に住む昆虫が増えてきたためです。

 アオマツムシは、もともと日本にいた昆虫ではありません。100年くらい前の明治時代に、外国から入り込んできた昆虫です。初めて鳴き声が記録されたのは、東京の賑やかな場所として知られる赤坂です。この昆虫は木の枝に卵を産むので、輸入された苗木に卵が産み付けられていたのだろうと考えられています。幼虫も成虫も木の上に住むので、街路樹の多い都会は、彼らにとって住みやすい環境なのです。寒さには強くないので、北の地方にはいませんが、この昆虫が多くいる地方では、ほかの虫の声が聞こえないほど、うるさいくらい大きな声で鳴いています。

アオマツムシ.png アオマツムシは、50年くらい前までは数も少なく、目立つ昆虫ではありませんでした。ところが、どうした訳か1970年代になってから突然数を増やしだし、最近都会では、秋の虫の声を代表する昆虫になってしまいました。

マツムシの耳.png アオマツムシやスズムシ、マツムシは全部コオロギの仲間です。鳴くのはオスだけでメスは鳴きません。コオロギの仲間は、その鳴き声を前足にある耳で聞いています。

 小さなギザギザ.png鳴くといっても、人間のように口から音を出すのではなく、2枚のはねをこすりあわせて音を出しています。ちょうど、バイオリンのようなものです。片方の羽を顕微鏡で見ると、小さなギザギザが沢山並んでいる様子を観察することができます。そのため、はじめは美しい声で鳴いていますが、秋の深まり共に、気温も低くなり、ギザギザも擦り減ってきて、声の美しさもだんだんと失われていきます。

 今宵、屋外の虫の音に、秋の涼を求めましょう。   (T.Y.)

posted by 豊島修練会 at 14:59| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年08月03日

会館だより「かけはし」


モモやミカンの実に隠された真実とは?


 夏を代表する果物のひとつであるモモも、八月の終わりになると、ミカンなどの秋の果物に主役の座をゆずるようになります。

 ところでモモの実には、どれにも一本の深いすじがついていますが、これはにはどんな訳があるのでしょう。モモには、どの実にも同じところに同じようなすじがついていますから、傷でないことはわかります。

モモのすじ.jpg モモは、花のめしべの一部が、ふくらんで実になったものです。じつは、花を形づくっているおしべやめしべ、花びらなどは、すべて、葉が変化してできたものです。ですから、モモの実も、もとをたどれば、葉が変化して実になったもの、ということになります。表面に縦一本のすじがついているのは、モモの実が一枚の葉からできている証拠です。表面に見られるすじは、葉が巻いてくっついたところのなごりなのです。ウメやスモモにも同じようなすじが見られます。

みかん1.png みかん2.jpgミカンの場合は、一番外側の皮をむくと、この実が十枚前後の葉からできていることがわかります。ミカンの場合は、中のひとつひとつの袋が、一枚の葉に当たる部分です。その証拠に、袋の背中側を見ると、縦と横に伸びる葉のすじが、白く残っている様子が見られます。私たちが食べている果汁のつまった部分は、簡単にいうと、葉の裏に生えた毛に、果汁がたまったものです。つまり、私たちはミカンの葉の裏の毛を食べているのです。また、よく実ったミカンのへたをとると、それぞれの袋に養分などを送っていた管が、袋の数だけ白いあととして見ることができます。このような実では、外側の皮をむかないでも、へたをとれば、中の袋の数を、およそ言い当てることができるのです。

すいか.png 果物は、つくりにそれぞれ特徴があります。食べる前によく見てみましょう。スイカも横に輪切りにしてみると、面白いつくりをしていることがわかります。            (T.Y.)


posted by 豊島修練会 at 15:11| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年06月29日

会館だより「かけはし」

かけはし R0507月号@.pdfかけはし R0507月号A.pdf


4本脚(あし)のツマグロヒョウモンは「こん虫」の仲間?


 夏は、チョウやセミ、カブトムシなど、こん虫が盛んに活動する季節です。ところで、「こん虫」とはどのような虫のことを指すのでしょう。理科の教科書では、「からだが、頭・むね・はらの三つの部分からできていて、あしが六本ある虫の仲間をこん虫といいます。」と説明しています。ここで、はねについて触れていないのは、チョウのように四枚あるものや、ハチのように二枚しかないもの、ノミのように全くないものなど、いろいろあるからです。しかし、脚が六本ということについても、子どもたちの感覚からすれば、カマキリなどは、かまを二つ、脚を四本もっているといったほうが自然です。カマキリの前脚は、獲物をつかまえるための道具として使われ、歩くことには使われないからです。

アメンボ.png 歩く以外のことに、脚を使っているこん虫は、カマキリのほかにもいます。例えばアメンボは、二本のまん中の脚と二本のうしろ脚、合計四本の脚でふん張って水面に浮かんでいます。前脚の二本は、いつも水面に軽くつけていて、水面を伝わってくる振動をとらえるのに使っています。そして、水面に落ちたこん虫の振動をキャッチすると、すばやくその場所に近づき、今度は獲物をつかまえるために使うのです。

 また、タテハチョウやジャノメチョウの仲間などは、四本の脚で花に止まっていて、ほかには、脚らしいものは見当たりません。注意深く観察している子どもたちの中には、このことに気がつき、「こん虫の脚は六本のはずなのに、何で四本しかないの?」と質問してくることがあります。脚が四本しかないように見えるのは、一番前の二本の脚は退化していて、短く折りたたまれたようになっているからです。この脚は、においや味を知るために使われていて、歩いたり物をつかんだりすることには使われません。

ツマグロヒョウモン.png さて、最近よく見かけるようになったツマグロヒョウモンも4本脚に見えます。このチョウはタテハチョウ科の「こん虫」です。

 ツマグロヒョウモンは、もともと暖かい地方のチョウで寒いところは苦手なため、以前、東京では見かけることがありませんでした。温暖化の影響はこのようなところにも現れています。(T.Y.)

posted by 豊島修練会 at 15:35| 会館だより「かけはし」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする