2024年05月11日

会館だより「かけはし」


あなたはカロチン? カロテン? (私は……)

 普段、テレビやラジオで耳にする言葉のなかで、自分が学習したのとは違う言葉に出会い、戸惑うことはありませんか。

 終戦後まもなく(1947年)文部省から出された小学校学習指導要領の試案では、吐く息のなかに多いものとして「炭酸ガス」をあげています。しかし、1958年に出されたものでは、同じものを「二酸化炭素」と呼んでいます。現在使われている理科の教科書は、例外なく「二酸化炭素」という言葉を使っています。

タンブリン.jpg また、幼児から大人まで広く使われている右のような楽器ですが、学校では「タンバリン」ではなく「タンブリン」と習います。これは、文部科学省から発行されている「教育用音楽用語」という冊子(1978年改定)に用語に関する基準が示されており、教科書に出てくる音楽用語がこれに従っているためです。

 ニンジン.jpgところで以前、学校の先生は、給食などの時間に「ニンジンには体に大切なカロチンがたくさん含まれているので残さずにしっかり食べましょう」と教えていました。しかし今では「カロテンがたくさん含まれているので」と教えます。いったい、いつからカロチンがカロテンになってしまったのでしょう。実は、2000年に食品成分表がに改定された際、「カロチン」→「カロテン」と表記が変更されたのがきっかけです。

 いまの子どもたちは家庭科の授業で「カロテン」と習いますが、それ以前は「カロチン」と習っていたので、どちらの言葉を身近に感じるかで、その人の年齢が分かると言われています。

 テレビやラジオの台風情報では、気圧の高さを報道する時、「ヘクトパスカル」という単位を使います。これも以前は「ミリバール」という単位を使っていました。ヘクトパスカルとミリバールは数値が同じなので、千ヘクトパスカルは千ミリバールです。この単位が使われるようになったのは、1992年からなので、お年寄りの中には、まだミリバールのほうが実感がわくという人もいます。(T.Y.)

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2024年04月06日

会館だより「かけはし」

かけはし R0604月号@.pdfかけはし R0604月号A.pdf


私たちの生活にとって大切な公衆電話 〜そのわけは…〜

 学校で、「とる」「いれる」「おす」という順番を覚える授業があるそうです。

 これは「公衆電話」の使い方を練習するための言葉です。「受話器をとる」「コイン(テレホンカード)をいれる」「番号のボタンをおす」という順番がわからないため、電話をかけられない子供が増えているのです。

電話のかけ方.png 1900(明治33)年に登場した公衆電話は、1985(昭和60)年頃には、全国で100万台近くが設置されていました。駅の改札口付近には、何台もの公衆電話がずらりと並んでいましたし、公園の電話ボックスや店先の赤電話など、町中いたるところで公衆電話が使えました。しかし、今ではあまり見かけません。10万台近くにまで減ってしまったのです。その数はこれからますます減っていき、2031年度末までには全国で3万台くらいになると予想されています。減った理由は、説明するまでもなくはっきりしています。携帯電話が普及して、皆が公衆電話を使わなくなったからです。2020年に、総務省が15才から85才までの日本人を対象に行ったアンケートでは、「公衆電話を過去1年間に一度も利用していない」と答えた人の数が、全体の74%を占めたそうです。年間50回以下しか使われていない公衆電話も多く、これではとても、採算が取れる利用回数ではありません。公衆電話はやがてなくなってしまうのでしょうか。

 今年の元日に能登半島を襲った大地震は、多くの被害をもたらしました。この時に一番役立ったのが公衆電話です。携帯電話がかかりにくい場所でも、公衆電話だけは使えたという声が多く寄せられ、災害時における公衆電話の役割が改めて見直されました。

電話ボックス.png 国は公衆電話を失くさないために、市街地では概ね1キロメートル四方、その他の区域では概ね2キロメートル四方を対象エリアとして、法律で設置を義務付けています。そして、それを維持するための交付金も用意されているので、まったくなくなってしまうという心配はありません。

 万一の場合、どこに行けば公衆電話があるかを知っておくため、あらかじめインターネットの、「公衆電話設置場所検索」で調べておくことをおすすめします。(T.Y.)

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2024年02月29日

会館だより「かけはし」

かけはし R0603月号@.pdfかけはし R0603月号A.pdf


私たちの生活にとって大切な電気 〜早期復旧を阻む技術的な困難〜

 令和6年1月1日午後4時10分に、能登半島を襲った大地震は、多くの被害をもたらしました。そのなかで被災者を最も困らせたのが、大規模に起こった断水と停電です。停電になって改めて、現代の生活のなかでいかに多くのことを電気に依存していたか思い知らされることになりました。

 成美教育文化会館は停電になっても、バッテリーのおかげで6時間は自動的に非常灯がつきます。薄暗くはなりますが、真っ暗になることはありません。またエレベータのために専用のバッテリーが備えつけられているので、電気が全く供給されなくなっても最寄りの階まで動いてから、ドアが開いて停止するようになっています。

 生活にとってなくてはならない電気ですが、どのような仕組みで私たちのところに届けられているのでしょう。

 一般の家庭には、100V(ボルト)や200V(ボルト)に降圧された(電圧が下げられた)電気が送られてきますが、成美教育文化会館のような大きな施設では、キュービクル式受電設備を使って、6600Vの電気を降圧して使用するようにしています。

 送電線.png発電所で作られた電気は、27万5000V〜50万Vという超高電圧にして送電線に送り出されます。なぜこのような高い電圧にするかというと、電圧が高ければ高いほど、途中で失われる電気が少なくて済むからです。超高電圧の電気は途中で何度か降圧され、私たちの身の回りの電柱の上には、6600Vの電気が流れています。電柱の上の方の、横に3本並んだ電線がそれに当たります。ところで、一番上の細い線は何でしょう。実はこの線には電気が流れていません。これは雷が落ちた時に避雷針の役割をしてくれるための線です。雷が落ちても、この線から45度の範囲にいれば被害を防ぐことができます。但し電柱や電柱のそばに雷が落ちると、その近くは被害にあう可能性があるので、電柱からは4m以上離れていた方が安全だと言われています。

 6600Vの電気は、電柱のところどころにある円筒形の柱上変圧器で、100Vや200Vに降圧され、家庭に送り届けられます。地震などで電柱が倒れると、その復旧に多くの時間がかかるのは、うっかり人が触れたら大変なことになる6600Vの電気を、安全に処理するため、多くの手間がかかるからです。 (T.Y.)

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2024年02月03日

会館だより「かけはし」

かけはし R0602月号@.pdfかけはし R0602月号A.pdf


フユシャク 〜冬の雑木林で繰り広げられる営み〜

 1月の「かけはし」で、ヒガンバナは夏のあいだ地上から消えることを紹介しましたが、昆虫のなかにも、夏のあいだ地上から消えて、冬になると現れるものがいます。その代表がフユシャクです。

フユシャク(メス).pngフユシャク(オス).png フユシャクとは、冬に出現するシャクガ(尺蛾)の仲間のことです。東久留米あたりでも、雑木林で普通に見ることができるガですが、夜に飛び回る種類が多く、大きさも小さいので、あまり目につきません。一番いいのは、夜に懐中電灯をもって雑木林に行ってみることですが、昼間飛び回るものもいるので、注意して探せば、明るいうちでも見つけることができます。東久留米あたりの雑木林では、12月中旬から3月上旬まで見つけることができます。

 フユシャクの成虫は口がないため、まったく食べ物をとりません。幼虫の頃に、からだのなかに蓄えた養分で、1ヶ月ほど生きることができるのです。

 フユシャクのもうひとつの特徴は、日本に生息する35種類すべてで、メスのはねが退化して飛ぶことができないことです。メスは木の幹や、公園のフェンスなどにじっとしがみついていますが、はねがないかわりにあしが発達していて、思った以上に素早く歩き回ることができます。同じ場所でも、少し時間が経つと、さっきいたはずのメスが見つからなくなってしまうことがあるので注意して見てください。種類によっては、落ち葉の下に身を潜めてオスを待っているメスもいます。このような種類のオスは、メスの出すフェロモンをたよりに、メスをさがしだすと考えられています。

 東久留米では、だいたい11月から3月までのあいだに活動し、産卵します。卵は春になると孵化して緑色のシャクトリムシになり、クヌギやコナラなどの葉を食べて成長し、2週間くらいで土中に潜りさなぎになります。そして成虫になる冬まで、そのまま休眠します。

 フユシャクが、わざわざ寒い季節を選んで現れるのは、冬は他の昆虫やトカゲ、カエルなどの天敵が少ないからだと考えられています。また、メスのはねが退化した理由としては、天敵が少ないのでとぶ必要がなくなったというだけでなく、体温を奪う原因となるはねをなくして寒さに耐える力を強めたり、はねに使われなくなった栄養をからだに割り当て、よりたくさんの卵を産めるようにしたりするためだと考えられています。             (T.Y.)

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2024年01月11日

会館だより「かけはし」

かけはし R0601月号@.pdfかけはし R0601月号A.pdf


冬の植物 〜四季をとおして、力強く、たくましく〜

桜花芽・葉芽.png 1月に入ると、寒い日が続くようになります。落葉樹の葉もすっかり落ちて、空が明るく見えるようになりました。11月のかけはしでも冬芽のことについて少し触れましたが、サクラの枝の先を見ると、冬芽がたくさんついていることがわかります。丸みを帯びた方が花になる芽、少し細くてとがっている方が葉になる芽です。数で言うと、花芽のほうが圧倒的に多いので、簡単に区別することができます。葉と花が一緒に出るのがヤマザクラで、葉より花の方が先に出るのがソメイヨシノです。

 ソメイヨシノは花もきれいで、すべての木が同じ親から接ぎ木で増やされたものなので、同じ地域の木は、ほぼ同時に花を咲かせます。唯一の欠点は、病害虫に弱く、寿命が60〜80年と短いことです。青森の弘前公園内には、例外的に、樹齢100年を超えるソメイヨシノが残っていますが、樹齢が1000年以上あると言われるシダレザクラに比べると、はるかに短命な木といえます。

タンポポロゼット.png 目を下の方に向けてみると、冬の野原のナズナやタンポポの葉は、地面に貼りついて、バラの花びらのように放射状に広がっています。このような葉のかたちを「ロゼット」と呼びます。「ロゼット」には、「バラの花飾り」という意味があります。

 この時期は、ほかの多くの植物が枯れて地上から消えているので、地面に広がった葉は、日光を十分に浴びることができます。そのため、冬の弱い日差しでも、しっかりと光合成を行うことができるのです。もちろん夏の方が、たくさん光合成を行うことができますが、夏のあいだは、植物が成長を続けているので、消費する養分も多く必要になります。それに対して、冬のあいだは、ほとんど成長しないので、消費する養分も少なくて済み、光合成で作った養分を、そのまま蓄えにまわすことができるのです。

ヒガンバナ・花.pngヒガンバナ・葉.png また、お彼岸の頃に、美しい色や形の花を咲かせるヒガンバナは、秋に茎が伸びて花を咲かせ、花が終わると地面から葉が出てきて、冬のあいだその葉を茂らせて光合成を行い、春を過ぎる頃に枯れてしまいます。ほかの植物とは反対に、夏のあいだは地上から消えて地面の下で過ごし、秋になるとまた地上に現れるという、変わった性質をもっています。  (T.Y.)

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