2022年11月11日

会館だより「かけはし」


イチョウは「生きた化石」といわれてるんだって!?

 イチョウが一年で一番目立つのは、葉が美しい黄色になる、秋の終わり頃です。

 イチョウは、「生きた化石」といわれることがあります。また、どこにでも生えていると思われがちなイチョウですが、不思議なことに、人が住んでいない山の中では、ほとんど見ることができません。

 化石などの調査から、イチョウの仲間は以前10種類以上あり、1億5000万年前には、地球上の多くの場所に生えていたことがわかっています。ところが、恐竜が絶滅した6600万年前、イチョウのほとんどは絶滅してしまい、中国の奥地に、たった1種だけ生き残ったのが、現在見られるイチョウなのです。また、化石で見られる葉の様子は、今と少しも違っていません。イチョウが「生きた化石」といわれるのはそういう理由があるからです。

イチョウ並木.jpg イチョウがよく見られるのは、道路や公園、神社やお寺、学校など、人が生活している場所か、その近くです。このことから、日本で見られるイチョウは、自然に生えたものではなく、人が植えたものだということがわかります。

 イチョウが、いつごろ中国から日本に伝わったのかは、まだよくわかっていません。しかし、千年以上前であることは確かです。秋に美しく黄葉し、幹は材木になり、葉や種子は薬や食べ物になるので、あちこちに植えられた結果、どこにでも見られる木になったのでしょう。

 このように、日本では身近に見られるイチョウですが、ヨーロッパに持ちこまれたのは、17世紀後半になってからです。当時、日本を旅したドイツの博物学者エンゲルベルト・ケンペルが、珍しい木として、ヨーロッパに紹介したのが最初と言われています。その後あちこちに植えられ、今ではヨーロッパだけでなく、アメリカの東海岸でもよく見られる木の一つになりました。

銀杏.jpg さて、イチョウの種子であるギンナンは、食べればほろ苦くおいしいですが、種子のまわりは、我慢できないほどの匂いです。しかし街路樹のイチョウには、ギンナンができません。神宮外苑や甲州街道には見事なイチョウ並木がありますが、その下にはギンナンが落ちていません。実は、イチョウには雄の花しか咲かない雄の木と、雌の花しか咲かない雌の木があり、ギンナンは雌の木にしかできないのです。街路樹として植える場合は、ギンナンができないよう、雄の木だけを植えるのが普通だからです。

 東京都福祉保健局のホームページには「食品衛生の窓」というページがあります。それによると、ギンナンを一度に多く食べると、おう吐、下痢、呼吸困難、けいれんなどを起こすことがあるそうです。しかし、中毒例として挙がっているのは、いずれも50個以上食べた際のものですから、少し食べるくらいは問題ないようです。(T.Y.)

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2022年10月06日

会館だより「かけはし」


地球は大きな磁石だ 〜磁石の指す向き〜

地球は磁石.jpg 方位磁針は、N極が北を指し、S極が南を指して止まります。でも正確にいうと、これは「北」を「北の方」、「南」を「南の方」という言葉に置き換える必要があります。それはどうしてかというと、磁石の指す北は、実際の北より少し西にずれているからです。どのくらいずれているかというのは場所によって違いますし、昔と今でも違います。現在、磁石だけを頼りに北へ100mまっすぐに進むと、北海道の稚内では20m弱、東京では10m以上、沖縄の那覇でも5m以上、西にずれた場所に行ってしまいます。

 では、なぜこのようなことが起きるのでしょう。実は、磁石が指すのは北磁極であって、北極点ではないからです。北磁極があれば南磁極というのもあるわけですが、どちらの磁極も、毎日のように少しずつ位置が変わっています。

歳差運動.jpg 200年前、日本で初めて正確な日本地図を作ったのは、伊能忠敬です。彼が全国を測量して歩いていた頃、磁石の北と地図の北は、ほぼ一致していました。しかし現在、北磁極は北極点から約1500km離れた所にあるため、日本では、北へ向かって歩くと、北の地方ほど西へずれてしまいます。南北方向がはっきりわかる大きな公園などに行くことがあったら、磁石を頼りに歩いてみて、方位のずれを体験してみると面白いでしょう。

 さて、古い地層の岩石を調べると、昔の地球の磁極の様子を知ることができます。それによると地球の南北は、過去に何回も入れ替わっていて、最後に南北が入れ替わってからでも約70万年経つそうです。そのため、そろそろまた逆転すると考えられていますが、南北の逆転は千年も一万年もかけてゆっくり行われるらしいので、朝起きたら突然南北が入れ替わっていた、ということはないようです。(T.Y.)

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2022年09月01日

会館だより「かけはし」

今宵は「月」にまつわるお話

 月には「新月しんげつ」「三日月みかづき」「満月まんげつ」「上弦の月じょうげんのつき」「下弦の月かげんのつき」という区別があります。「新月」というのは、見えない月のことです。

 小学4年生は、理科で、「三日月」「半月はんげつ」「満月」の違いを学びます。この時は「上弦・下弦」という言葉はでてきません。実は、同じ「半月」でも、これから満ちていく半月と、これから欠けていく半月とでは、欠けている部分も、見える時間も大きく違います。「上弦の月」と「下弦の月」をきちんと区別することができれば、今までよりもう少し、月を眺める楽しみが増すことでしょう。(小学6年生では、月と地球の関係を詳しく学習します。)

 「上弦の月」はこれから満ちていく月のことです。お昼ごろに東の空に出て、真夜中に西の空に沈みます。また、「下弦の月」はこれから欠けていく月のことです。真夜中に東の空に出て、次の日のお昼ごろに西の空に沈みます。よく見かける月の図では、左側が欠けているものを上弦の月、右側が欠けているものを下弦の月として紹介していますが、何度聞いても、右が上弦だったか左が上弦だったか、迷ってしまいます。

月の満ち欠け.png 上弦と下弦を迷わず区別するには、これから沈もうとする月で比べればいいのです。月を弓に見立て、沈む直前に「弓の弦」にあたる部分が、上に来るのが上弦の月、下に来るのが下弦の月というわけです。これなら、間違えることはありません。

 上弦の月、下弦の月という名前には、もうひとつ別な説もあります。上旬・中旬・下旬という言い方がありますが、これと同じように、月が満ちていくときだから上、満月を過ぎて月が欠けていくときだから下だというものです。

 今年の9月の満月は10日です。旧暦の8月15日の夜(十五夜)に見える月を「中秋の名月」と呼び、今年(2022年)は9月10日が丁度その日にあたります。この日は今でも「十五夜の月」として親しまれ、ススキや団子をお供えして月を眺める習慣が残っています。地方によっては里芋をお供えするところがあり、「芋名月(いもめいげつ)」とも呼ばれています。    (T.Y.)

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2022年08月05日

会館だより「かけはし」


「食中毒」の正体をあばく 〜感染を防ぎましょう〜

 最近コロナウィルスに対する感染対策意識が高まっていますが、この時期、食中毒についても、十分注意する必要があります。

😮細菌は短時間に急速に増える

 @黄色ブドウ球菌 …… 食中毒の原因となる細菌にはいろいろあります。激しい嘔吐の原因となる黄色ブドウ球菌は、食中毒を起こす数まで増えるのに平均3時間といわれています。この菌による食中毒は、菌が作る耐熱性の毒素によるものです。菌が一旦増えてしまうと、加熱して菌自体を殺しても毒素は生き残るので、食中毒を防ぐことができません。黄色ブドウ球菌は、人の皮膚などに存在する菌なので、直接手で握ったおにぎりや手で詰めたお弁当などから起きることが多いようです。

 Aウェルシュ菌 ……… 土や水の中など自然界に幅広く生息しているウェルシュ菌も、増えると下痢の原因となります。この菌は酸素がないところで増え、100℃で6時間の加熱にも耐える“芽胞”というものを形成します。内部の酸素濃度が低くなる粘性のあるカレーやシチューなどは、短時間加熱しただけでは完全に菌を死滅させることができません。残ったカレーを次の日に改めて加熱しても、食中毒が起きてしまったという例もあります。

食品は冷蔵庫で保管し、回転を早くする食中毒.png

 細菌が増えるには、「水分」「栄養分」「適当な温度」が必要です。干物は昔から「水分」を断つ保存方法として利用されてきました。塩漬けも細菌の細胞内の「水分」を奪う方法のひとつです。また「適当な温度」ですが、細菌が増えやすいのは30℃前後です。冷蔵庫内の温度が10℃以下だと細菌の数は増えなくなり、冷凍庫内がマイナス15℃以下だと、かなり長期の保存が可能となります。残ったカレーなどは冷蔵庫で保存するのが賢い方法です。

 しかし、冷蔵庫内の温度は一定ではありません。扉を開け閉めすれば庫内の温度が上がり、元の温度に戻るまでにかなりの時間を必要とします。開閉は回数を少なくし、短時間にことを終わらせる工夫が求められます。ドアポケットは、奥の方に比べ、温度が上がりやすい部分なので、入れる物や入れる場所には注意しなければなりません。冷蔵庫の内部に冷気が十分行き渡るよう、食品の量を7割以下に抑え、なるべく早く消費してしまうことが安全です。  (T.Y.)

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2022年06月30日

会館だより「かけはし」


お米の国の人だもの 〜お米の生産量と消費量〜

 最近、食べ物の値上げのニュースや、食料の不足を心配するニュースが目立つようになりました。これは異常気象や国際紛争など、いろいろなことが影響しているのです。特に問題なのは、我が国の食料自給率の低さにあります。

 令和2年度の農林水産省の発表によると、食料全体の63%は輸入品で、国内で生産される食料は37%しかありません。もし輸入が全面的に止まってしまったら、多くの日本人が、食べ物に困ることになります。

 ところで、食料の自給率には大きな地域差があります。一番自給率が高いのは北海道で216%、一番低いのは東京都で0%です。「0%」と聞くとびっくりしますが、これは四捨五入した数値で、実際には0.49%くらいはあるそうです。北海道に次いで自給率が高いのは秋田県で206%、そのほか100%を超えているのは青森県、岩手県、山形県、新潟県で、いずれも東日本の県です。

 日本も今から60年くらい前までは、食料自給率が70%以上ありました。それがこんなに減ってしまったのは、食生活の変化に大きな原因があります。自給率が100%近くあるお米の消費量が減少し、自給率が13%しかない小麦の消費量が増えてきたからです。

 日本人が食べる年間のお米の量は、60年前は一人118sでしたが、今はその半分程度の51sしかありません。一方、パンや麺類の原料になる小麦の年間消費量は、ほぼ横ばいです。小麦については、世界の輸出量の30%をロシアとウクライナが担っているので、これらの地域からの供給が滞ると、世界中が小麦の奪い合いになるのではないかと心配されています。

山盛りご飯.png 年々お米の消費量が減ってきたので、日本はお米の生産量も年々減ってしまいました。1968年のお米の生産量は1400万トンを超えていたのに、現在では860万トンにまで落ち込んでいます。小麦の年間輸入量は500600万トンくらいですから、以前のように1400万トンのお米を作るようになれば、小麦が一粒も輸入できなくなったとしても、主食はなんとか確保できると言われています。

 これまで、遙か昔にさかのぼって日本で生活する人たちの胃袋を満たしてきた「お米」。このお米作りに恵まれた環境を享受し、これまでの食生活を見直して、「おいしく作れるお米をもっと食べよう」としてもよいのではないかと思います。(T..
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